これぞ三池バイオレンスの真骨頂。三池崇史監督、小栗旬主演で描く裏世界のあれこれ。主人公の汚職刑事に、よくわからない形でFBIまで絡んできて、80年代の刑事ドラマっぽさから任侠映画っぽさ、さらにはサイバーパンクアニメっぽさまでゴタマゼにしたニッポンヤクザトウキョウな映画である。けっこうな勢いでスプラッタでアナーキーな作風なので刺激の強いシーンが多く、そういう意味で鑑賞には注意が必要だが、アングラっぽさ、トウキョウっぽさ、サブカルっぽさのごった煮は、なにか少し懐かしさを覚える。そのせいもあってか、この作品はバイオレンスを散りばめてあるにもかかわらず、終始どこか哀愁を帯びている。

時代とともにヤクザはその力を失い、移民の拡大とともに裏社会は歯止めが利かなくなった。ヤクザの仁義はもはや抑止力にはならず、秩序なきトウキョウは制御不能な犯罪都市と化す。今フランスで起きている現実を思いながらこの映画を見ると、ここに描かれているのは裏社会が正しく裏であった時代への郷愁なのかもしれない、と感じる。

この作品はもちろんフィクションである。世界はもう、こんなに平和ではない。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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一言でいえばめちゃくちゃな映画だ。まともな登場人物はおらず、ストーリーもムチャクチャである。リアリティも説得力もない。ヤクザと繋がりのある刑事を主人公に据え、二つの連続殺人を追う。その一方にけっこう強引な形でFBIが絡んでくる展開が用意されているのだが、その辺の設定にもまったくリアリティはない。そもそもリアリティを求めようとした気配すらなく、これらストーリーの裏付けとなる要素はすべて、見せたい絵を見せるための土台に過ぎない。

暴力にまみれ、ふざけたシーンもあり、血みどろと笑いが交差するような作品でありながら、通底しているのは哀しさである。大立ち回りを描いても、殺人シーンを描いても、セックスを描いても、ずっと哀しさが立ち込めている。

ラストには途中で予想された通りの結末が用意されているのだが、ここは見事に予想通り、哀しい。

ラストシーンの余韻を感じながらエンドロールを眺めていると、この映画の哀しさは、ここに描かれているのがすでに失われた日本だから、というところから来ているのではないかと感じる。令和に入り、日本はおそらく死んだ。日本のなにが死んだのかはうまく言い表せないが、それがこの映画に描かれているのではないかという気がする。この映画は日本へのレクイエムなのかもしれない。