
町がある日突然古代生物に襲われる。日常の風景に極端な異物として古代生物が乱入し、一気に非日常に取って代わられる。普段生態系の頂点に君臨する人類は、こういう事態に直面すると生物としては極めて弱いことを思い知る。この手の映画は過去にもいくつもあり、そこに付随して描かれる家族のドラマもだいたい似通っている。この作品も、町に古代生物が登場するカラクリのこじつけには新鮮味がなくもないが、少々力業が過ぎるのでかえって雑な印象を受ける。
襲い来る古代生物との攻防はホラー映画的であり、ゾンビ映画的でもある。そういう系統の恐怖ものが好きな人は夏の恐怖ものとして楽しめるだろう。しかしSFとしては各所が雑で、恐竜ものとしてのこだわりも薄く、豪華なスタッフ&キャスト陣に比してB級感は否めない。あくまで恐怖映画の一種として見るのが良いだろう。
なぜ今この映画を作るのかよくわからないのだが、逆に、こういう作品をこんな顔ぶれで作ってしまえるところに、映画大国アメリカの底力を感じる。レイティングこそ指定されていないが、けっこう自然に人が食われたりするので子どもと見に行くには少し注意したほうが良いかもしれない。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
町の一区画がワームホールによって太古の世界と入れ替わった、という設定。SF的お膳立てではあるが作品はまったくSF的ではなく、純粋にパニック映画である。パニック映画によくある設定だが、主人公たちの一家は家族関係に問題を抱えていて、離婚寸前、離散寸前の状態にある。そんな家族が非常識なほどの大ピンチに直面し、命がけのサバイバルを通して絆を深め、手を取り合って明日に向かうという大団円を迎える。なにもかもが定型であり、新しさはほとんど感じない。ワームホールによって一部分だけが過去の世界に行く、という設定はあまり類を見ない気もするが、この作品においては都合の良い状況を作り出すための装置としてしか機能しておらず、かえって雑な印象につながっている。
背景の設定も家族のドラマもとってつけたようなもので、結局のところこの作品が見せたいのは「ある日突然恐竜に襲われる」というパニック状況である。それだけに特化しているのを潔さと見ることもできなくはないが、むしろ夫婦間のドラマや多様性への配慮などが邪魔にすら感じる。
J・J・エイブラムス監督というとスターウォーズやスタートレックなどの巨大シリーズの印象が強いが、実はB級っぽいSF作品もけっこう手掛けている。そういう意味ではこの作品は彼らしいと言えなくもない。